国家の品格/藤原正彦
藤原正彦氏の『国家の品格』。
3年前のベストセラーですが、今こんな時代だからこそ読んでみたい一冊。
資本主義、市場主義、金銭至上主義が破綻した今、我々は生きていくべきかを考える上で、一つの指針になる本だと思います。
この本が話題になった時に、私にとって衝撃だったのは、『品格』という言葉でした。
久しく忘れ去れていた"死語"だったように思います。
しかし、この『品格』という言葉を聞いて、なんて美しい言葉だろうと思った記憶があります。
さて、私がこの本を読んで、目からウロコが落ちた主張を3点。
①論理は必ず正しいものではない。
私は数学をちょっと学んだ者なので、論理的に正しいこと=正しいことだと思ってしまいがちです。
実際に、論理的に正しい説明を求められることも多くあります。
しかし著者は、論理が正しくてもその結論が正しいとは言えないと言います。
その理由として、論理の起点に誤りがある可能性を指摘しています。
確かに、いくら正しい推論ができていても、その起点が間違っていれば結論は誤るわけですよね。
論理にばかり目が行っていると、そういう当たり前のことを忘れてしまいがちです。
論理は必要だが、何でも論理で片づけるのは良くないと述べられています。
数学者である著者の言葉だからこそ、逆に説得力があります。
たとえば、「なぜ人を殺してはいけないのか」。
これを論理的に説明しようとした本はいくつもありますが、著者はこれを論理的には説明できないと言います。
では、なぜいけないのか。
答えは明瞭です。
いけないからいけない、それだけです。
②市場主義は欧米が生んだ過ち。
欧米の市場主義を徹底的に否定しています。
だからといって、共産主義を肯定しているわけではなく、共産主義も否定しています。
日本社会は、どんどんと欧米化しています。
実力主義・人事評価・自由競争が跋扈する世の中・・・果たしてそれでよいのでしょうか。
「改革」という言葉だけが先行し、何を改革しているのかわからない中で、単に甘い言葉に誘惑されているだけのような気がしませんか?
確かに、私もそんな甘い言葉に憧れていたこともありました。
ただ、この数ヶ月、テレビや新聞で流れるニュースを見ていて、そういう甘い言葉は強者が弱者をいじめるためにあるのだなと、つくづく感じました。
大規模な派遣切りに、いったい何の意味があるのでしょうか。
会社は誰のためにあるのでしょう。商法とか習うと、「株主のため」と言っています。
それは嘘です。絶対に嘘です。
会社はそこで働く社員のため、社員の家族のためにあるのだと思います。
それを「改革」という名の下に、簡単に切っていく。信じがたいエゴです。
私は、正社員の給料を半分にしてでも(偉い人は7、8割カットしてでも)、雇用を守るのが会社の義務だと思いますけどね。
③真の国際人とは、自国の文化を理解している人
この本を読んでいるうちに、この著者は欧米に批判的な単なる右よりな人なのか?と思ってしまいましたが、大きな誤りでした。
著者は他の国の文化を否定しているわけではなかった。
ただ、日本が最も素晴らしい国だという主張をしているだけでした。
おそらくですが、著者の考えは、全ての国にいいところがあるが、日本人は日本の良さを主張しない、ということなのじゃないかなと思いました。
そもそも、私達の世代は、日本の良さなんてことを考えないような気がします。(私だけか?)
私は神社仏閣が好きですが、その歴史や文化についてはあまり知らない。
古典作品を読んだりもしないし、俳句や短歌を嗜むわけでもない。
そういう風潮では、自国の良さを説明できず、英語が喋れたところで国際人にはなれないと著者は言います。
確かに、「日本の文化について教えてくれ」と言われても教えられません。
読んでいて、そんな自分に恥ずかしさを覚えてきました。
長くなりましたが、私が読んでいて感銘を受けた3点を簡単にまとめてみました。
もちろん上記以外にもいろいろ書いてあります。
納得できる部分もあるし、納得できない部分もあります(エリート主義は反対)。
でも、著者の言うように「金の豊かさ=国の豊かさ」という考え方は、改めるべきですよね。
金が無くったって、誇れる何かを持っている・・・そんな『品格』を持った人間の集まる国でありたいものです。
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